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2001年10月29日
再び、アメリカと日本の教育について
キャンパスは現在写真のような状態で、歩いているとあちこちから葉が落ちてきます。ただの葉なのに顔などに当たると結構痛いんですねー、これが。顔に当たるような歩き方をしているとろい私が悪い、と言われればそれまでですが。
現在、私はひとつだけ学部生向けの数学(Linear Algebra:線形代数)を取っています。線形代数といえば、日本の理系の学生は大抵一年次の最初に取らなければならない授業ですね。それがこちらでは三年生の授業です。まあ年次はいいとして、今取っているのは線形代数Iなのですが、IIから取れば良かったと少々後悔しています。なんといいますか、つまらなすぎる・・・教授が大変数学のできる人なのはよくわかったし、一般的なアメリカ人の数学レベルからすれば驚異的な数学センスの持ち主であることもよくわかったのですが、この授業を取っていてわかることは線形代数ではなく教授の頭の良さだけになりかねないのが本当のところです。
私は殆ど忘れているとは言え日本で一度やっているからまだなんとかなっているようなものの、他のアメリカ人の学生を見ているとこっちが心配になってしまいます。以前、日本の英語教育とアメリカの数学教育は酷似していると書きましたが、実際に学部の授業を受けてみて身に沁みている真っ最中です。大学院の授業だとクラスメイトが数学を叩き込まれてきた人ばかりのせいかあまり気になりません(それでも気になる時は気になる)が、学部の授業を受けてみると、正直なところ「あちゃー」と思わずにはいられません。
前にも書きましたが、できる人はものすごくできます。が、できない人となると、大学生が一次方程式を解けないとか、どうかすると足し算すらおぼつかないというレベルになってしまいます。この背景には、親切すぎる電卓の普及と、いわゆる個性を伸ばす教育の組み合わせがあるように思います。大半のアメリカ人が持っている電卓は、三角関数や指数関数どころか方程式が解けたり行列の計算ができたりグラフが表示されたりします。そういうものに頼っていれば自分の頭を使って考えなくなるのは自明ですね。それでも、中には数学の面白さ・美しさにとりつかれて自分でああでもないこうでもないとやり始める子供はいるわけで、アメリカの教育はそういう子供の後押しには助力を惜しまないようです。が、逆に言うと落ちこぼれは落ちこぼれたまま・・・さて、ひるがえって日本はどうでしょう。英才教育をしない分、ものすごい落ちこぼれも出ない反面、飛びぬけた才能も発掘されませんね。ただ、平均した場合、画一的な教育の方が今のところ高い結果を出しているように見えます。
そのような教育の延長として、日本は貧富の差が小さな国となり、アメリカはそれが大きな国となっているように思えます。どちらも一長一短なのでどちらが良いとは一概には言えません。ただ、二度目になりますが、日本で推し進められようとしているゆとり教育が怠惰教育とならなければいいなと思うのです。個性を尊重し天才を後押しする表と裏で何が起こるか、前例があるのだからしっかり見てほしいものです。アメリカという国も人が集まってできている以上、長所ばかりではありません。もちろん短所ばかりでもありません。日本はいい加減に、焼け野原でチョコレートを配ってくれたアメリカ様的な崇拝から抜け出しても良さそうですがね。
投稿者 akiko : 17:26 | コメント (3) | トラックバック
2001年10月22日
最近のアメリカ
本日の写真は、先週書いた「シェー」をしているビーバーの木像です。そういえば夏に行ったUCLAにも熊の銅像があったのですが、あれも、私の目には北海道土産の木彫りの熊拡大版(但し鮭なし)にしか見えなかった・・・まあ絶望的なまでに芸術のセンスがない私の審美眼なので、あまりあてにはしないでください。
それから、ひとつ訂正を。先週のコラムでUniversity of Oregonのマスコットがディズニーのドナルドで著作権料がどうこうと書きましたが、あれはディズニーからの寄付だという情報が。失礼致しました。
オレゴンの冬は雨季なのですが、今週からだんだん雨が降り始めました。会津ほどではないものの、ここのところ、とにかく寒いです。晴れていれば暖かいのですが。先週、暖炉があるので張り切って薪を買ってきたものの、煙突が煙突の役目を果たさず家中煙だらけで大変なことになってしまいました。近所の人に消防車を呼ばれるのではないかと本気で心配したほどです。日本人が魚を焼いていたら消防車を呼ばれた、という話はよく耳にしますが、まさか本気でそういう心配をすることになろうとは。あーびっくりした。
さて、炭疸菌で東の方は戦々恐々としているようですが、こちら西海岸のど田舎は相変わらず平和です。しかし、あちこちで星条旗を掲げた家や車を見かけるようになったのは、やはり9月11日以降ですね。店にも"God bless America"と書かれた大きな看板が売られていて、実際にそれを立てている家も見ますし。別にアメリカに恨みがあるわけではありませんが、そういうのを見る度に、どんな物好きなGodだか見てみたいもんだと思うのが正直なところですね。が、世界貿易センター崩壊後電光石火に始まった空爆、そして早速の誤爆、特殊部隊投入と展開されるにつれ、大統領支持率は下がるどころかとどまるところを知らないかのような高さを見せています。アメリカを全面支援すると言い切って戦争放棄を放棄しそうになっている小泉首相の支持率も下がる気配はなさそうですし、なんだかどっちもどっちですね。それにしたって、「国際社会の一員として取り残されないように」とかなんとか、もう少し言い方はなかったんでしょうか。「皆持ってるんだから買ってよ」とねだる小学生かお前は!と突っ込める野党議員はいないのかしら。
今回の戦争というか報復というかテロにはテロをというか、まあとにかくこの一連の騒ぎも大変ではありますが、アメリカの不景気ぶりもなかなか深刻になってきました。幸か不幸か世界貿易センターから始まったアフガニスタンへの攻撃が隠れ蓑になっているためあまり耳目を集めずに済んでいますが、あっちでもこっちでも十人単位から一万人単位まで色々なレイオフが起きており、かつては大変低かった失業率が再び上がってきています。ICとはインドとチャイナという意味だと言われるほど、コンピュータ技術者に対する発行ビザ数はここ数年増加に次ぐ増加をしていたのが、こうも凄まじい勢いで景気が転落すると、放り出された外国人労働者の問題が出てくるような気がしますが・・・これは、私も決して他人事ではありませんから。まだアメリカで働くと決めたわけではありませんが、そういう選択肢もありますし。どこの国でも外国人労働者の立場は大変弱いものですね。無理もないといえば無理もないことですが、自分の身に降りかかるとなるとやはり理不尽さを感じるのではないでしょうか。
自分の身に降りかかる、といえば、私がアメリカで得るであろう最大の財産は、学位でも英語でもなく、マイノリティになったことがあるという経験だと思います。たまに、これが裏目に出て大変な国粋主義者と化して帰国する人もいるようなので、ここは気をつけなければいけませんが。でも本当に、日本もアメリカも一長一短なんですよね。きっとどこの国でもそうなのでしょうが。
投稿者 akiko : 16:41 | コメント (0) | トラックバック
2001年10月15日
もうすぐハロウィン
本日の写真は、我が家の暖炉の上に飾ってあるJack O'Lanternです。今月末はもうハロウィン・・・月日の経つのは早いものですね。私の生活の方も、ハロウィンの飾りを買ってくるくらいの余裕は出てきております。ただ、学期中だというのに風邪をひいてしまったのが良くないのですが。たしか去年も同じ時期に風邪をひき、しかも熱まで出して大変なことになったような・・・季節の変わり目ですし、日本の皆様もご自愛ください。
今月末のハロウィンに向けて、あちこちのお店でハロウィン用の飾りや変装用の衣装、例の大きなかぼちゃなどが売られています。我が家の近所も玄関先にかぼちゃを飾っている家がいくつかあります。と、今書いていて気がつきましたが、OSUの色はあのかぼちゃの色です・・・オレンジと黒がOSUカラーで、フットボールの試合がある時はキャンパスの周りにはオレンジ色のトレーナーを着た人ばかりになります。アメリカの大学はどこもその大学の色とマスコットがあって、ブックストアなどで色々と売られています。OSUのマスコットはビーバー(オレゴン州自体がビーバーステイトと呼ばれる、とどこかで読んだ記憶あり)で、ブックストアにはビーバー印のトレーナーやらカップやら色々と置いてあります。このコラムにも時々登場するMU(記念講堂)には、2メートルもあろうかというビーバーの木像が立っていて、何故か「シェー」のポーズをとっています。しかもビーバーなだけに歯が出てるし・・・私は見る度におかしくてしかたがないのですが、他の日本人はなんともないのでしょうか。そして、現在フットボールシーズンのためか、街中で「GO BEAVERS!」の旗をつけた車やショウウィンドーをよく見かけます。そこでわかったことがひとつ。ビーバーの絵は失敗すると、ビーバーというよりも「歯の出たライオン」になるようです。
ちなみに、University of Oregon(UO)の方はカラーが緑と黄色で、マスコットはディズニーのドナルドダックです。なんでも、毎年ディズニーに支払う著作権料が高いとか高くないとか・・・UOのブックストアには一度行ったことがありますが、「BEAT OSU!」とプリントされているマグカップが売られていました。まあ、こちらも「BEAVERS IN THE SEATS DUCKS IN THE TRUNK」と書かれたステッカーが売られているのでお互い様です。
OSUの今年の学生数は今までにくらべてかなり増えましたが、これはどうやら去年のフットボールの成績と密接な関係があるようです。フットボールが強いからそこの大学に行くというのはどうも賛成しかねますが、良し悪しはともかくそのような傾向がある以上、大学側が過剰ともとれる投資をするのは無理もないことなのでしょう。たとえ州立であろうとも大学経営がかなりビジネス的色合いの濃い国ですし。私としては、教育および研究機関である大学が予算のかなりの部分をフットボールにつぎ込むというのはどうも腑に落ちないものなのですが。
投稿者 akiko : 15:15 | コメント (0) | トラックバック
2001年10月08日
引越し完了
十月に入り、木々が段々と色づいてきました。晴れていれば昼間はとても暖かいのですが、朝方の冷え込みが激しくて体調を崩しそうです。
月曜日に弁護士さんと話をしてきました。今回はとりあえず状況を説明するだけでしたが、次のアポイントメントで何かしら進展があるかもしれません。大変感じの良い弁護士さんでした。アメリカは弁護士の数がとても多く競争が激しいという理由もあるからでしょうか、あまり変な人に当たってしまう可能性は低いのかもしれません。弁護士さんと、おそらくロースクールの学生だと思われるアシスタントの人がいたのですが、そのアシスタントの女の子はこちらが書いたドキュメントを読みながら泣き出してしまうし、弁護士さんは話を聞いているうちに怒りのあまりに私たちよりも熱くなってスラングを使いまくって怒り出してしまうし、なかなか面白いミーティングでした。
とりあえず新しい住まいに引越しも終わり、一番の問題だった私の部屋も片付き、一応落ち着いたところです。こういうぎりぎりの時期だったため、大学から多少遠くなってしまったのは致し方ないのですが、まあとにかく住む場所が見つかって良かったことです。
先週書いたアシスタントシップなど、アメリカの大学はお金を持っている学部は大変お金持ちです。というのは、学費や州からのお金(州立の場合)に加え、企業などからの寄付・投資が多くあるからです。先日も、OSUの工学部がコンピュータ関連の某大企業からアメリカ国内で10大学に投資されるうちのひとつを受けたというニュースがありました。また、OSUのとある学部は、学校からの予算を一切使わずすべて投資されたお金でまかなわれているという話も聞きます。日本の国公立大学も独立法人化の方向に動いているようですし、この際文部省傘下の横並びをやめて自力で投資金を集めてくるくらいの気概を持って欲しいものですね。
ニュースといえば、先週、未成年飲酒でフラタニティーのひとつが閉鎖になり、総額9万ドル以上の罰金を課せられたようです。飲酒・喫煙に関しては日本の比ではなく厳しいアメリカで、IDを忘れたら最後、私はまずお酒を売ってもらえません。まあ無理もないといえば無理もないことなのですが。
ところで、アフガニスタンへの空爆が始まってしまいましたね。やはりアメリカの正義とは、テロリストと同じレベルの舞台に上がることだったようです。それを、憲法や法律をひん曲げてまで張り切って全面支援する国もどうかと思いますけどね。
投稿者 akiko : 16:46 | コメント (0) | トラックバック
2001年10月01日
秋学期一週め
先日のテロに対するアメリカの世論も当初よりはやや落ち着きを見せてきているようで、私はほっとしています。が、まだまだ油断はできませんが。テロリストに対してもアメリカ政府に対しても。自分が支払っている所得税が人殺しにまわるのかと思うとやりきれませんし。
本日の写真は、久しぶりの著者近影です。相変わらず、美容院は恐ろしくて行っておりません・・・この調子だと、日本に帰る用事ができるまで切らないかも。夏にACM SIGGRAPH 2001でお会いした先輩が「何か欲しい物あるなら買ってきてあげるよ」と提案してくださった時、迷わず「では美容院をひとつ」とお願いしてしまった(もちろん却下されましたが)くらい、こちらの美容院は恐ろしいです。日本語でもうまく美容師さんとコミュニケーションをとれない私が、英語でできるとは思えないし・・・。
例のホームレス問題ですが、先週は弁護士のスケジュールがいっぱいで、明日にアポイントメントがあります。というわけで、進捗は来週お知らせすることになります。そして、運良く見つかった住まいへの引越しは明日(月曜日)の予定です。うまくいくといいんですが・・・忌憚なく言わせてもらえば、実際に引越しが完了するまでまったく安心も信用もしていません。引越しどころか、明日から電気も水道も間違いなく使えるだろうという期待もあまりしていませんし。すべてのサービスに対して非常に懐疑的になってしまうのはあまりいい気分ではありませんが、我ながら無理もないような・・・あーでも、どんどん心が荒んでいくようでやっぱり嫌です。
さて、今週から秋学期が始まり、キャンパスは学生であふれかえっています。ガラガラだった夏休みとは随分違っています。さすがに三ヶ月の休みでぼけまくった頭を戻すのは容易ではなく、気合を入れ直すのが大変です。そうそう、悪いことばかり続いていますが、そんな中にもひとつ朗報が!なんとこの学期から学費免除+給料支払いのファイナンシャルエイドが受けられることになりました。給料といってもそう多額というわけではありませんが、まあなんとか生活できそうなので大変有難い話です。その代わり、夏休み前から続けている仕事を授業を受けながら同じペースで進め、さらにプロジェクトリーダーとしての責任も加わってくるという大変さは増えましたが。
アメリカでは、数多くの大学院生が上記のようなファイナンシャルエイドを受けて働きながら学校に通っています。私の場合、ポジションはリサーチアシスタント(RA)ですが、この他にティーチングアシスタント(TA)もあります。ただ、プロフェッショナルスクール(ロースクール・メディカルスクール等)は多少ファイナンシャルエイドのシステムが異なってくるようですが。TAかRAで贅沢さえしなければ十分生活できますが、この上に奨学金などで家族を養っている大学院生も数多くいます。日本の大学の門戸は誰にでも開かれているように見えて実はかなり閉じられている感が否めないものですが、たとえ一文無しであろうと本人次第でどんな大学にでも通えるこのシステム、私は大変素晴らしいと思いますが、いかがでしょう。