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2004年01月26日

ラストサムライ

年が明けてから、ようやくラストサムライがヨーロッパで公開されました。渡辺謙がゴールデングローブ賞候補とは素晴らしいですね。賞は逃しましたが、候補に挙がるだけでもすごいことです。

で、映画なんですが、真田広之めあてで観に行った私は大満足です。でも、もう少し彼の出る場面が多いともっと嬉しいですね。監督(エドワード・ズウィック:Edward Zwick)も身を切られるような思いでカットを選んだ(「毎日が『ソフィーの選択』(※)だった」とインタビューで語っています)そうですし、これはDVDに期待したいところです。完全版とか出ないかなー。

観に行った映画館の「ご自由にお取りください」コーナーにポスターがあったので貰ってきました(写真参照)。ふふふふふー真田広之は素敵ですねえ。これを眺めて部屋でにまにましている私は暗い?ふん、暗くて結構。しかもこのポスターが唯一そこに残っていたラストサムライポスターで、どうしてもトムクルーズや渡辺謙のような人気はなさそうですが、いいんです。おかげでポスターが手に入ったんだし。渡辺謙はこの映画で、タフでマッチョでストイックだなんて素敵!と人気だそうです。これを受けて、独眼竜政宗あたりのDVDが海外発売になるといいですね。

フィクションをちゃんとフィクションにするためにはディティールが丁寧に作り込まれていないとえてして妙な感じになるものですが、その点この映画は虚実織り交ぜるその織り交ぜ具合が実に絶妙です。しかもよりによって明治だなんて一番複雑な時代を選んでしっくりきてるんだから、監督はじめスタッフは「葉隠」はもちろん明治の書物(※※)も相当読んで勉強したんだなあ…と思ったら、監督は大学で日本史専攻だったんですね。それもハーヴァードで元駐日大使を含む教授陣に鍛えられたそうで、これはもう、相当勉強したどころの話ではないですね。そこらの日本人よりよっぽど日本の歴史と文化に精通していそうです。そりゃ映画の中で、鳥居の上に投げ上げられた縁起かつぎの石まで自然にセットに組み込めるわけです。

難を言えば、時間に制限があるためかところどころ説明不足に感じられる点があるのと、戦闘場面においてカメラが素早く切り替わるハリウッド特有のカメラワークになっているところでしょうか。せっかく綺麗な殺陣を演じられる役者が多いのに、あんなにカット割してしまってもったいないです。この2点もDVDに期待ということで。

反面、この監督は「間」のとり方が実に日本人的で秀逸でした。登場人物がぎゃあぎゃあうるさいタイプの映画にだんだんうんざりしていたところなので、静と動をうまく使い分けたこの映画は落ち着いて観られます。あと、着衣がどんどん増えていくラブシーン!他のハリウッド映画にはない新鮮さです。

正直なところ、最初に左前の着物を着た小雪のポスター(フィルムの裏焼きだったとか)を見た時はほんとにこの映画大丈夫なのかと思ったものですが、そんな心配は無用でした。もちろん日本人の目には妙に映るところはあります(富士山はチョモランマ並の高さなのか?とか)が、外国人向けに日本を演出するために必要な範囲という程度におさえられているので特に目くじら立てることもないと思います。おすすめです。音楽担当のHans Zimmerがとてもいい仕事してますよ。


※Sophe's Choice:メリルストリープ主演の映画で、ホロコースト(ナチによるユダヤ人虐殺)をくぐり抜けた女性が当時を思い出すというストーリー。彼女が迫られた選択とは何か、そして彼女の決断は何か、どうぞ観てください。

※※明治時代には、ほぼ同時期に日本人が英語で書いた本3冊が世界的ベストセラーになっています。その3冊とは、

・"Bushido":新渡戸稲造「武士道」←5千円札のおじさん
・"Japan and Japanese"(後に"Representative Men of Japan"と改訂):内村鑑三「日本及日本人」(改訂後は「代表的日本人」)
・"The Book of Tea":岡倉覚三(天心)「茶の本」

いずれも著者とは別の人によって日本語訳がなされています。興味深いのは、この3人のうち2人(新渡戸・内村)が熱心なキリスト教徒(宗派は違う)であるという点です。これを頭に置いて読むと面白いですよ。内村鑑三にいたっては、

・"How I Become a Christian"(「余は如何にして基督信徒となりし乎」)

という本を書いています。また、岡倉天心は「茶の本」の前に

・"The Ideal of the East"(「東洋の理想」)
・"The Awakening of Japan"(「日本の目覚め」)

という2冊も出版しています。
他にも幕末や明治に日本を訪れた外国人による本が数多くあり、ズウィック監督はこのあたりも参考にしたと思われます。日本人になじみのある名前は、ラフカディオ・ハーン(小泉八雲)、アーネスト・サトウ、アーネスト・フェノロサあたりでしょうか。
明治の本は漢文体が多くて辛いという人は、三島由紀夫の

・「葉隠入門」
・「若きサムライのために」

あたりがとっかかりとして適しているように思います。ただ前者は著者の主観の占める割合がかなり高く、そこは賛否両論ありそうです。文体が古いという点では明治の本どころではない読みにくさですが、やはりオリジナルの

・「葉隠」(山本常朝)

にも目を通されることをおすすめします。

投稿者 akiko : 2004年01月26日 21:22

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