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2004年03月17日

スペインのテロ

もう春ですねー。と浮き浮きしていたら、木曜日にマドリード(スペイン)で大きな無差別テロがありました。死者は200人以上、負傷者数千人という規模です。スペインでのテロといえばETA(Euskadi ta Askatasuna:バスク祖国と自由)によるもので原則として爆破予告と犯行声明がセットになっている、という今までのお約束とはどうも違うようです。

まず、ETAは犯行を否定しており、さらにアルカイーダが犯行声明のようなものを出していますが、まだ首謀者が特定されていないのが現状のようです。

スペインではテロに対するかなり大きな抗議デモがあり、他のヨーロッパ各国でも同じようなデモがありました。現在あちこちで半旗を見かけます。献血に行く人の数も相当数のようでスペインでは現在のところ負傷者に輸血するための血液が足りないということはないようです(※)。また、CNNによれば、ブンデスリーガ(ドイツ)の強豪FCバイエルン・ミュンヘンが同じくスペインの名門クラブチームレアル・マドリー(どちらも創立100年以上!)にチャリティ試合を申し込んだそうです。

ETAは日本人にはやや耳慣れない名前ですが、ヨーロッパではIRA(Irish Republican Army:アイルランド共和軍)と並ぶ組織です。ETAが独立を唱えるバスク地方は、スペインとフランスの国境に位置します。現在はおよそ半分の土地がスペインに属し、ピレネー山脈を挟んで、残りの半分がフランスに属しています。ここには石器時代の壁画で有名なアルタミラ洞窟があり、人々はバスク語という他のヨーロッパ言語とはまるで違う言葉を使い、バスク人の8割以上は血液型がRhマイナスであるという、まったくもってルーツの不明な土地なのです。そうそう、ベレー帽はバスクの民族衣装ですよ。バスクは自然が美しく、鉄鋼業が盛んで、ワインの産地でもあり料理が美味しく、人々はおしなべて勤勉であるとよく言われます。

反面、その地理的条件から幾度となく戦火や圧政にさらされてきた土地でもあります。ピカソの絵で有名なゲルニカは、バスクにある小さな町(※※)です。また、現在こそスペイン側のバスク地方は自治州ですが、フランコ独裁政権時代(※※※)には自治権は剥奪されバスク語の使用も禁じられていたという歴史もあります。

さらに、2002年にはETAの活動基盤になっているという理由から、スペイン政府はバタスナ党という政党を非合法化しました。バタスナ党はバスクで実に1割以上の議席を占める政党です。民主政権下において特定の政党が非合法とみなされるというのは極めてまれな出来事です。

このような背景から、スペインでは「バスクの人々の気持ちはよくわかるが、ETAのやり方には賛同できない」という意見が多数のようです。その通り、いくらETAは予告するのが慣例とはいえ、一般市民を無差別に巻き込む可能性の高いテロ活動は独立運動にプラスになるとは思えません。

が、それと同時に、だからといって「平和的」なやり方ではいつまで経ってもバスクの独立はかなわないだろうとも思います。決してテロ行為を肯定するわけではありません。が、暴力はいけないだとか人の命は尊重しなければいけないだとか自分の家族や恋人や友達をある日突然テロで失うことを想像してみろだとか、そういうことは、きっと自分がバスク人ではないから思えるのです。

上にも書いたように、今回のテロの首謀者はまだ完全には特定されていません。これがETAによるものであればスペイン内部、範囲を広げたとしてもせいぜいEU内の問題なのですが、アルカイーダが関与しているとなれば話は変わってきます。現在イラクにはいろんな国の軍隊がいる中で特に名指しで警告されている日本も、決して他人事ではないのです。

さらにスペインでは総選挙で野党が勝利し、イラク駐留中のスペイン軍はどうも撤退しそうです(CNN.co.jp)。イギリスがEU内でどんどん微妙な立場になっている気がしますが、こちらは今後どうなるのでしょうね。


※献血といえば、ドイツに半年以上いる私はもう日本で献血できません(厚生労働省のQ&A)。じゃあドイツではどうなのかというと、今度は体重が足りなくて献血できません。ぐあー。

※※ゲルニカ(Guernica):ナチ空軍によって徹底的に爆撃され破壊された町。この無差別爆撃の報せでパブロピカソが怒りに震えて描いたのが例の巨大な絵「ゲルニカ」であり、ナチの軍人に「この絵を描いたのはお前か」と問われて「いや、これを描いたのはあなたがただ」と答えたというエピソードが有名です。ちなみに、ピカソの名前はPablo Diego Jose Santiago Francisco de Paula Juan Nepomuceno Crispin Crispiniano de los Remedios Cipriano de la Santisima Trinidad Ruiz Blasco y Picasso Lopezだそうです。長い!(参考:Wikipedia)

※※※フランシスコ・フランコ(Francisco Franco)政権:スペイン市民戦争(1936 -- 1939)後に成立した独裁政権。上記のナチによるゲルニカ爆撃は、ナチ政権がこの戦争でフランコ側をサポートしたという背景によるもの。フランコについては、Wikipediaの英語のドキュメントがいろいろと詳しいです。

投稿者 akiko : 2004年03月17日 19:35

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